葛飾北斎×
気仙沼ニッティング
江戸の浮世絵師・葛飾北斎の作品を収蔵する美術館「北斎館」と、気仙沼ニッティングのコラボレーションにより、葛飾北斎の作品が表現された手編みニットアイテムが生まれました。
テーマとなった作品は2つ。
「赤富士」として親しまれている葛飾北斎の「凱風快晴」と、
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葛飾北斎の代表作「神奈川沖浪裏」です。
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コラボレーションのきっかけは、「北斎館」の塩澤耕平さんにお声かけをいただいたことでした。
長野県小布施町にある「北斎館」には、日本全国はもちろんのこと、世界中からお客さまが訪れます。「北斎館」で葛飾北斎の作品をご覧になった世界中のお客さまに、葛飾北斎の作品をモチーフにした、現代の日本の質の高い手仕事も見ていただきたい、というお考えのもと、「北斎館」のミュージアムショップに置く作品を一緒につくりましょうとお声かけをいただいたのでした。
葛飾北斎といえば世界的に人気の浮世絵師。なんだかおそれ多いですし、どんなものができるのか当初はまったくわかりませんでしたが、でもそれ以上にワクワクし、ぜひやらせてくださいとお受けさせていただいて、このコラボレーションが実現したのでした。
思えば、葛飾北斎の作品をプリントした商品は数あれど、手仕事で再現された作品はあまり見たことがありません。
「せっかくなら、ただ写実的に表現するのではなく、ニットだからこそできるものがいいですね」
「アイテムとしてかわいくて、使いたくなるものにしたいですね」
「もし葛飾北斎が見ることがあったら『ふふ、面白いね』と言ってくれるような作品にましょう」
そんなことを話しながら、北斎館の塩澤さんと気仙沼ニッティングのメンバーで知恵を絞り、試行錯誤し、2つのアイテムが生まれました。
「赤富士」をモチーフにしたポンポン帽子。
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日本で特に人気の「赤富士」は、実際に身につけられる「ポンポン帽子」になりました。「赤富士」のグラデーションが帽子のボディで表現され、ポンポンは雲のかかった空のようになっています。
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かぶってみると、折り返しの部分が、富士のすそ野のように青緑色のラインになり、かっこいいです。さすが北斎の色彩感覚。他では見ないけれどバランスのいい色合いのニット帽に仕上がりました。
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もう一つの作品は、「神奈川沖浪裏」をモチーフにしたニットバッグです。
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ご覧いただけるでしょうか。このリアルな「神奈川沖浪裏」ぶりを。気仙沼ニッティングでも初めて取り組む「インターシャ」という技法を用い、「神奈川沖浪裏」の繊細な波を表現しました。波の先端、白くシュワシュワとくだけ散る部分は白いファーで、荒海の上で船にしがみつく人々はスパンコールで表現されています。
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持ち手の部分は革、内側にはナイロン地の内袋がついており、しっかりとしたつくりです。中にものを入れても編み地に響くことがなく、安心してたくさんお使いいただけます。
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さて、今回のコラボレーション作品をつくるにあたって、浮世絵版画と、手編みのニットの共通点に気づきました。それは、それぞれの工程を担当する職人が、それぞれの持ち場でいい仕事をすることで、最終的にいい作品ができあがること。
葛飾北斎は、浮世絵の「絵師」でした。北斎が描くだけでは、絵は一点ものです。でも、北斎の描いた絵を、「彫師」という職人が木版に彫り、その木版に「摺師」が絵具をつけて紙に刷ることで、浮世絵版画として多くの人が手に取ることができるようになりました。いい作品を生み、届けるには、絵師だけでなく、彫師、摺師の仕事が重要だったことでしょう。
今回、葛飾北斎の作品をニットで表現するにあっても、「彫師」と「摺師」にあたる方々が、いい仕事をしてくれたおかげで、いい作品をつくることができました。
特に「神奈川沖浪裏」のニットバッグは、技術的に非常に難しいものでした。「神奈川沖浪裏」の絵を、編み物で表現できるよう考え、編み図(設計図)を起こしてくださったのは、ニットデザイナーの東海えりかさんです。 それを、気仙沼ニッティングの編み手たちが忠実に編み上げました。 その関係は、まるで、彫師と摺師のようでもありました。
「神奈川沖浪裏」のバッグの編み地デザインをしてくださった東海さんにお話を伺いました。
― 葛飾北斎の神奈川沖浪裏という作品を編み地で表現するというお題を聞いたとき、どう思われましたか。
「お声をかけて頂く少し前から名画を編み込みたいと思っていました。そんな時にもともと好きだった『神奈川沖浪裏』のお話しを頂いたので『これはもうやるしかない!』と思いました。『難しい』よりも『面白そう』の方が圧倒的に強かったです。」
― デザインするにあたって、どの点が難しかったでしょうか。
「浪(波)の部分です。原画は浪のこぼれるような飛沫の部分を線で細かく表現をしているのですが、編み込みだと1目の大きさ以下のものは描けないので全体のバランスを取りながら削る部分と残す部分を調整するのに時間がかかりました。」
― この作品をつくってみてのコメントを、ぜひ。
「編み図を作るにあたって『神奈川沖浪裏』の構図の素晴らしさを再確認する事ができました。そしてこの模様を編み込む編み手さんも素晴らしいです。1目1目を積み上げていく作業の後に更に細かな刺繍。自分で作っておいてなんですが本当に頭が下がります。有難うございます。」
実は、ニットバッグの制作を担当した編み手のひでこさんも、
「この作品を見たとき、『むずかしそう』より『編んでみたい』と思ったの。そう思わせる力が、『神奈川沖浪裏』にはありますね」
と話しています。技術的にはとんでもなく難易度の高い作品なのですが、それでも取り組んでみたい、やってみたいと職人に思わせる、葛飾北斎。
200年前に、葛飾北斎の絵を彫った彫師も、版に絵具をつけて摺った摺師も、もしかしたら、同じような気持ちだったのかもしれません。
「赤富士のポンポン帽子」と「神奈川沖浪裏のニットバッグ」は、「北斎館」で4月6日(日)まで開催中の「インフルエンサー北斎」という企画展で、ご覧いただけます。
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展示だけでなく、「北斎館」のミュージアムショップで、「赤富士のポンポン帽子」と「神奈川沖浪裏のニットバッグ」をお求めいただけますよ。
北斎館
長野県上高井郡小布施町大字小布施485
TEL : 026-247-5206
FAX : 026-247-6188
開館時間 : 午前9時~午後5時
(ご入館は午後4時30分まで)
また、数量限定となりますが、気仙沼ニッティングのオンラインストアでも、ご注文いただけることになりました。こちらは、売り切れ次第終了となる予定ですので、ご希望の方はお早めにどうぞ。
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「赤富士のポンポン帽子」
- ◯ 素材
- ウール 100%
- ◯ サイズ
- フリーサイズ
〈内寸〉
平置き時 約46cm
最大まで伸ばした時 約72cm
〈高さ〉
約28cm(折り返しなしのとき)※手編みなため、多少の個体差がございます - ◯ 価格
-
16,500円(税込)別途送料 1,100円(税込)がかかります。
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「神奈川沖浪裏のニットバッグ」
- ◯ 素材
-
表地
ファー部分 : ベビーアルパカ 63%、ナイロン26%、ウール11%
ファー部分以外 : ウール100%
裏地 : ナイロン100%
持ち手 : 牛革 - ◯ サイズ
- 幅 : 約25cm 高さ 約35cm(持ち手を除く)
持ち手 : 高さ 約13cm - ◯ 価格
-
110,000円(税込)別途送料 1,100円(税込)がかかります。