「このセーターを着ている日は、
なんだか一日、気分がいいな」

そんな風に感じていただける
セーターをお届けしたいなと思いながら、
わたしたちは日々、手を動かしています。

糸の質感を
よく確認し、
色を吟味し、

手と目で編み地を
たしかめながら、
ひと目ひと目、
編み上げる。

一着のセーターを手編みするには、
何十時間もの時間がかかります。

一回くるっと手を動かすと、小さな編み目がひとつできる。
もう一回動かすと、もうひとつ編み目ができる。
それを何度もくりかえし、
小さな編み目を少しずつかさねていくことで
一着のセーターの形ができていきます。

それは、手間と時間のかかる仕事です。

でも、着てくれる人は、
それよりずっと長い時間を、
そのセーターとともに過ごされるかもしれません。
たとえばもし、セーターを気に入ってもらえて、
何年も何十年も、着ていただけたら。
その人は、何千時間ものあいだ、
そのセーターに身を包まれることになるでしょう。

そんなことを想像すると、
「このセーターを着ているときは、
 いつも、うれしい気分でいられるといいな」
と、つい願うのです。

糸がたっぷり空気をふくんであたたかいように、
編み地がゆるすぎずかたすぎず心地いいように、
肩まわりが動かしやすいように・・・。
目と手で確認し、心をくばり、工夫をかさねながら、
わたしたちは編みます。

その工夫のつみかさねで、
セーターは、着やすいものになっていきます。
でもどうやら、それだけではないのです。

編まれている長い時間のあいだに、
その場の空気やら、やさしい気持ちやら、
いろんなふわっとしたものがセーターに編み込まれていきます。
なぜでしょうね、それは、あんがい伝わるんです。